巻観光協会-会員ファイル⑧松野尾みらい会<前編>

【松野尾みらい会】 と 【上堰潟桜まつり】

毎年春になると、一面桜並木と黄金色の菜の花でいっぱいになり、沢山の人々が訪れる上堰潟(うわせきがた)公園。

巻市街から車で10分、角田山の麓に広がる広大な公園内には、休憩所(ログハウス)、バーベキュー施設、ローラー滑り台・ターザンロープ、乗用遊具専用コースなどのほか、1周2キロメートルの遊歩道、木道、東屋、11ヘクタールの湖面、芝生地なども整備され、春には桜や菜の花、夏にはヒマワリ、秋にはコスモスなど四季折々の花々が楽しめ、ピクニックやハイキングなどで一日ゆっくりと過ごすことができる。

昨年、この上堰潟公園の桜をライトアップして、夜桜を楽しめるようにしようという団体が立ち上がった。それが、

「松野尾(まつのお)みらい会」。

地域に移住してきた若者を中心としたグループで、2023年に発足して以降、春の「上堰潟桜まつり」、秋には「上堰潟ハロウィンまつり」を主催し、上堰潟公園、松野尾地域を大いに盛り上げている。

今回はそのグループの中心メンバー3人にお会いして、グループの取り組みや地域社会との関わり、思いのたけを聞いてみることに。

秋のハロウィンまつり  ※ご提供画像

実は、この地域ではコロナ渦の際、地元の割烹「えびすや」さんや現西蒲自治会長(令和7年3月時点)吉田会長を中心に、子どもたちに楽しんでもらうため有志でグループをつくり、感染対策をしっかりした上で「にしかんキッズフェス」というイベントを何度か行った経緯があった。地域の子どもたちを中心に大変盛り上がった記憶があり、筆者もボランティアとして参加していた。

コロナ禍が収まってきてそれぞれが自分たちの本業に戻り始め、イベント開催は一段落かな、というタイミングで松野尾地域に若くて元気のいいグループが新たに立ち上がったと聞き、なんと!ちょうど良いタイミングだなあと感じながら、今回主要メンバーである3人にインタビューをすることに。

代表の五傳木陽介さん(左)  ※ご提供画像

まずはその「松野尾みらい会」リーダーの五傳木(ごでんぎ)陽介さんに連絡を取り、指定場所で午後から待ち合わせ。

場所は、松野尾地域の古民家を改装して昨年秋にOPENしたばかりというカフェ「pentoito-ペントイト-」

10台分ほどある駐車スペースに車を停めると、松野尾地区の古くからある集会所といった感じの平屋の建物に、オシャレなカフェのサインが目を引く。

ペントイト店内(※夕方閉店頃に撮影 店内はお客様でいっぱいでした)

中に入ると、その日は週末の午後ということもありほぼ満席。若い女性たちやカップルが思い思いの時間を過ごしている様子。古民家の風情を生かしながらも良い感じにリノベーションされていて、なにやらとってもオシャレな店内。カウンター内では髪の長い優しげな若いマスター(?)の男性と女性が忙しそうにオーダーのコーヒーやスイーツの準備をしている。

さて五傳木さんが到着し、自分たちもおすすめのコーヒーセットをオーダーして、案内されたカウンター席に。

五傳木さん「はい、宜しくお願いします!改めまして、松野尾みらい会の五傳木です」

五傳木さんとは観光協会や自治協などのイベントで面識もあり色々お話も伺っていたので、今回改めて色々と深堀りさせていただく格好。

その五傳木さんのお話で、今目の前でカウンターでコーヒーを入れてくれている男性がメンバーのひとり、高橋大(タカハシスグル)さんということがわかった。カウンターの女性は高橋さんの奥様で、一緒に松野尾に越してきて、昨年10月にこのカフェを開設したのだそう。ぜひメンバーのこともよく知ってもらいたいということで、こちらを待ち合わせ場所にしてくれたとのこと。


高橋さん「はじめまして。タカハシスグルと申します。」
「イラストを描くのが好きで、造形大を卒業後イラストレーターとして活動する傍ら、昨年からはこのカフェを営んでいます」


高橋さんは「タカハシスグル」名義で活動されていて、今回の桜まつりのパンフレットや会場装飾などのデザインを担当。

※ご提供画像

高橋さん「ありがとうございます!チラシではイメージを大切にしていて、あくまで手書きのイラストで人の手のあったかさを感じられるような、そんな思いを乗せてデザインを考えました」

高橋さん「はい、ペンと糸、から来ています。自分と妻の作品づくりに掛けています」

カウンター越しにお二人にお話しを伺いながらも、失礼にも途中でうっかり「あれっ!これ美味しい」とつい話の腰を折ってしまった。それくらい、スイーツのチーズケーキが美味しいのにびっくり。(うまく説明できないので、是非カフェで実際に味わってみてください)

奥様特製の『つつむ』チーズケーキが絶品(苺のソースは5月までの限定とか)

五傳木さん「ここのコーヒーは最高なんですよ。すごく落ち着く空間も好きで。」

「ヨウスケさんはオープン以来常連客として、毎週欠かさず夕方の少し空いてきた時間に来て下さるんです。自分の家の様に寛いでくれて」と嬉しそうに奥様。
高橋さん「いつもめっちゃいろんな話をしてくれて、楽しいですよ」

高橋さん「僕と妻が2022年に松野尾に移住してきた後、元集落センター(現ペントイト)を改装してくださった大工の片平雄(かたひらたけし)さんという方がもう一人のメンバーで、その方がヨウスケさんを紹介してくれた縁で3人が繋がっているんです。」

五傳木さん「地元松野尾小学校の運動会のあと、バーベキュー大会があって、そこで同じく移住者で建設業の(片平)タケシ君と出会って意気投合したんです。その彼が、自分の他にもアート活動を通してこの地域で何か面白いことをやりたいという若者がいるよと、ここにいるスグル君を紹介してくれました。」

「二人とも自分にはない能力を持っていて、この二人とならきっと面白いことがやれそうだと直感しました」

松野尾みらい会の結成

2023年に、五傳木さん、片平さん、高橋さんの3人で「松野尾みらい会」を結成。

共通するのは、この西蒲に外からやってきた「移住組」ということ。

3人揃った時に、この地域で生活していく上で何か地域のためになる面白いことをやりたいね、という話になったのは出会って間もなくのことだったそう。

会の命名は、まずは何から始めたらよいか?わからなかったときに知り合った、「やりたいことをどんどんやってみなよ」と自分たちの背中を押してくれた地元市議の土田さん。

桜まつりライトアップイベント点灯式の様子  ※ご提供画像

五傳木さん「まず始めは、松野尾コミュニティセンター前広場で小さなワークショップを開催し、これが思いのほか好評だったことで、他にももっと楽しいことが出来るんじゃないか、となりました。

僕は、松野尾出身の妻との結婚を機に東区からこちらに来て、もう10数年が経つんですが…

いつも上堰潟公園の桜や景色を見るたびにその美しさに感動していて、この地に自分らで何か貢献出来ることはないかな?という思いがずっとあったんです」

そして、五傳木さんが思いを共有出来る仲間を得て「よし、やろう!」となったのが、今回も4月に実施される予定の上堰潟公園の夜桜ライトアップイベント。

地域でのプレゼンの苦労、一転開催に向けて

イベント企画書を作り、コミュニティセンターで地元コミュニティ協議会にプレゼンするも、
最初はなかなかうまくいかず。

慣れない企画書づくり、世代や、それぞれが置かれた環境を超えて思いを伝えることの難しさ、そして地域で新参者が周囲を動かすことの難しさを痛感したという。「よそ者」だからなかなか受け入れてもらえないのか?と後ろ向きに思い悩むことも度々あった。

しかし、くじけず何度もチャレンジしていった中で、共感し手を貸してくれる人、がんばれと背中を押してくれる人もいて、その都度救われたりもしたと五傳木さん。

先の土田市議はもちろん、松野尾地区自治会長の山賀さんもその背中を押してくれた人で、「恩人」と二人はしみじみ語る。
企画の段階で、コロナ禍でのイベント開催やテイクアウトイベントにと以前から奔走していた西蒲区自治会長の吉田金豊さんも加わり、更に西蒲区長ら行政の協力も得られることとなり、あとは開催に向けて突き進むだけ、となった。

上堰潟桜まつり、ライトアップイベント開催

かくして地域の有志らが協力し、家族や友人たちの支えもあって、

いよいよ、2024年 第一回【桜まつり】ライトアップイベント開催にこぎつけた。

桜まつりでのイベント  ※ご提供画像

五傳木さん「ピンク色の桜並木と黄金色の菜の花でいっぱいの上堰潟公園の美しさ、景観に心から感動していたけど、こんなに皆さんが協力してくれて、一緒に思いを共有してくれたことに感激し、感謝しかありませんでした。素晴らしい上堰潟の桜をライトアップで照らして、地元のみんなと一緒にその場、その時間をずっとずっと共有していきたい、とにかくそんな思いで」

※ご提供画像

ペントイトのカウンターで熱い思いやお話を伺っているとアッという間に日が暮れていて、気が付くと他のお客さんも皆さんすでにお帰りになっていた(とっくに閉店の時間でした…すみません)


日を改めて、もう一人の主要メンバーである片平雄さんにもお話を伺うことにし、ペントイトを後に。

次の約束の場所は…

五傳木さん曰く「僕らにとってのはじまりの場所」

(後編に続く)

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【松野尾みらい会】

◆五傅木陽介(ゴデンギヨウスケ)さん (松野尾みらい会代表、イベント企画運営)

地元企業の会社員として働き、10年ほど前に結婚を機に新潟市東区より移住
現在地域活動に奔走

・地元の人たちが喜ぶことはなにか?
・若い世代が次の時代をつくる
・イベント、景観、経済活動も含めた地域活性化のための組織づくりを目指したい

◆高橋大(タカハシスグル)さん (イベント企画、イラストレーター、カフェ経営)
2024年11月に松野尾に喫茶と雑貨のお店「pentoito-ペントイト-」開業
上堰潟イベントでは広報、チラシデザインなどを担当

・上堰潟の景観の美しさを大切に
・ビジュアルにこだわりたい
・あったかさを感じるイベントづくりをしたい。

◆片平雄(カタヒラタケシ)さん (イベント企画、創作・演出担当、工務店経営)
山形県出身、新潟大学工学部で建築を学ぶ
奥様が西蒲区和納出身で、神奈川、静岡で一般企業に勤めたのち新潟に帰潟、数年間の会社勤めののち松野尾に工務店「片平建築」を起業。

・地域の大工さんとして、家づくり、居心地の良い「村」づくりをしていきたい
・地域社会へのリスペクト、「人と人をつなぐ」役割も
・海外に目を向けて、桜などの植樹も

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※後編は片平建築『はじまりの場所』でのトーク、インタビュー、秋のイベント紹介
等を掲載します。(4月7日更新予定)

(インタビュー、撮影、文/巻観光協会 小林正輝)